2005年 ヒラタツのときめき短編物語− 清川望・スポーツへの望み

 登場人物:主人公(川野洋太)、清川望、伊集院レイ、古式ゆかり、紐緒結奈、片桐彩子


 川野洋太は清川望と同じく、きらめき高校時代は水泳部に所属していた。二人とも大会で優勝、実業団へ入って名選手になる…はずだった。
 しかし不況の波は容赦なく実業団を襲い、選手の解雇や引退が相次いでいたのである。

 そんなある日、清川と川野はいろいろ話し合った。勿論今後のことである。
清「どうしよう…私たち、これからも水泳続けられるのかなぁ?」
川「…やっぱり実業団の運営が苦しいからなぁ。でも水泳や今までのロードワークはやめたくないぞ」
清「そうだよねぇ。なんか今までのことが水の泡になりそうで…」
川「う〜む…他に水泳が出来るところないかなぁ。」
清「そうだ、伊集院さんに頼んでみてはどう」
川「そうか、スポーツセンターを持っている伊集院の会社なら水泳もできるだろうな」
清「話は早いね!早速相談にいってこようか」

 実業団を抜けて、スポーツに関心のある企業に入ってクラブ活動で続けることも不可能ではない。
 それにトライアスロンなど水泳の行かせるスポーツだってある。
 水泳ができなくても、今までのロードワークを活かしてマラソンや駅伝など陸上に転向できなくもない。

清「ねえ伊集院さん。きらめき高校卒業以来ご無沙汰していたけど…会社の運動部活動はどうなの?」
川「実はオレ達、実業団が行き詰まってて…このままでは水泳が続けられそうにないんだ。何とかしたいんだけどいい話はないか?」
伊「……清川さんたちの話は私も気になるわ。」

 伊集院財閥総統・伊集院レイ。きらめき高校卒業後、伊集院家の家訓から開放されて男扱いされず、誰から見ても女の人として
振舞っていたのである。アメリカ留学から戻り、今は伊集院グループのひとつの会社で副社長になっていた。

伊「…たしかに日本は欧米各国と違って、スポーツ後援も企業サイド中心になるわね。だから会社に余裕がないとサポートも出来ない。
  生憎ですけど今の私の会社もバブル崩壊の波を受けて資産が減っています。ちょっとスポーツ活動には手が出ないわね。」
清「そういえば、高校時代にあったあのスポーツセンターはどうなったの?」
伊「…あ、あの施設は…伊集院グループの不良債権として処分され、人手に渡ってしまいました。」
川「そうだったのか…やっぱり伊集院家も不景気だったとは。分かった、他を当たってみるよ」

 かつての伊集院財閥も今や見る影もなくなっていた模様。
 清川・川野はつづいて古式不動産を訪れた。かつての同級生・古式ゆかりが次期社長候補として専務になっていた。

清「きらめき高校ソツ器用以来ご無沙汰しているね。古式さんの会社って何かスポーツでもやってるの?」
古「…はい、最近まで陸上部ならありましたけど…バブル崩壊と土地の価格下落で資金がなくなり、残念ながら昨年廃部になりました。
  それに今や我社も合理化で人員をギリギリまで削減しており、会社経営も厳しくなっておりますもので。あなた方を受け入れることは
  残念ながら出来ません。悪しからずご了承下さいませ」
川「う〜む、やっぱりそれかぁ…残念だなぁ。でも古式さん、きらめき市内のスポーツ施設の土地取引は知っているんでしょう?」
古「はい。伊集院さんの持っていた施設は昨年IT関連会社に売却されました。当社が仲介しましたので間違いありません」
清「…へぇ〜っ、きらめき市のITベンチャーかぁ…そこってスポーツ振興やってるんかなぁ?聞いたことある?」
古「その会社なら知ってます。同級生の紐緒結奈さんってご存知ですか?」

 紐緒結奈。きらめき高校きっての天才科学者と噂されていたのだが…一流企業でコンピュータ技術を培ったあと、独自のアイデアで
ITベンチャー企業「ヒモーコーポレーション」を設立、今やきらめき市きっての活気ある会社となっていた。

清「こんにちは〜っ。ここの会社に水泳部があると聞いてここに来たんだけど」
片「ハァーイ!…あ〜っ、望ちゃん久しぶり〜っ!ハゥアーユー!?」
清「なんだ片桐、ここの会社に努めてるんかぃ!?知らなかったなぁ〜」

 清川望の親友だった片桐彩子はフランスから帰った直後にヒモーコーポレーションにデザイナーとして抜擢されていた。
 片桐彩子はウェブデザイナーだけでなく、持ち前の明るさを活かして総務の仕事も兼務している。望の彩子の話は続く…

片「そうねぇ、仕事はハードだけどノルマが片付けば割と自由がきくからいいと思うわ。」
川「…オレは紐緒さんには散々苦労したよ。マジで脳改造の寸前までいったからなぁ…」
清「でも今は我慢するしかないなぁ。私に出来る仕事があれば雇ってもらいたいけど…あとで紐緒社長に相談するね。」
紐「ふふふ…(((_^) 話は全て聞かせてもらったわ。やっぱり予想通りの展開ね。」
片「オーノー!社長、盗み聞きですかっ!?…ま、話は早いからいいけど」
紐「清川さん。我が社にはスポーツの出来る人材が居ないわ。インストラクターとして働いてくれれば助かるわ。
  スポーツ支援が海外IT会社への睨みになるから、今はあなた達の力が必要ね。そして昨年手に入れたあのスポーツセンター、
  プールは使えるから水泳は続けられるわ。ただし、マラソンなどロードワーク競技にも出てもらうわよ!?それでよければね」
清「紐緒さん、ありがとう。しばらく検討してみるよ。」
川「オレも紐緒さんに礼を言うよ。これで活躍の幅が広がればいいからな。」

 毎朝ロードワークをこなしていた清川望と川野洋太は現行の実業団に見切りをつけ、紐緒結奈の会社に移籍した。
 無論、毎日50kmのロードワークは欠かすことなくマラソン・水泳などで活躍していったのである…。
 

ーつづくー